近畿地方の朝の番組に「おはよう朝日です」(ABCテレビ)というのがあり、まあ天気予報と占いと時計代わりくらいな感じでつけているのですが、この番組でたまーに天気にまつわる視聴者からの疑問に答えるコーナーみたいなのをやっている。で、先日(2025/3/21)「春はなぜ霞むのか?」というテーマを取り上げていた。
前述のとおり、私はこの番組を基本的にはぼやーっと聞いているので、この時もやっぱりぼやーっと聞いていたのですが、途中で急に注意を向けさせられた。
というのも、解説の中で、「春霞の情景を描いた古文の一節」ということで、『枕草子』の第一段を取り上げたからです。そう、「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは…」の箇所です。この「やうやう白くなりゆく」が、「春霞によって白っぽくなった空の状態」だという。
ん??????となったわけです。ここは、夜の暗がりから「やうやう」=次第に、「白く」=白んで(明るくなって)ゆく「あけぼの」の空のありさまを描いたものではないのか…? それ以外の解釈が提出されることなど微塵も思っていなかったくらいのある意味「常識」では…?
手元にある限りの解説書とか辞書とかもろもろ調べましたが、「やうやう白く」の「白く」を春霞によるものと記したものは見つかりません。もともと「しろく」には「著く(しろく)」と解釈する説もあったらしく、「新編日本古典文学全集(小学館)」の『枕草子』には、「『白く』と『著く』を重ねるか。」という注がついています。「著し」は「はっきりしている」という意味だそうなので、「やうやう著く」であれば、「次第にはっきりして」となるから、どちらにしても、夜の闇の世界から、日の出とともに周囲の物の輪郭があからさまとなっていくありさまを描いたことになるのでは。
うーん…。頭から真面目に聞いていたら、「やうやう白く」=「春霞」だという根拠を知ることができたのかもしれませんが、私が注意を向けて以降は、少なくともそういう内容はなかった、と思う。どういう流れでそういう解釈が出てきたのだろう。『枕草子』第一段は、中学教科書におけるド定番の文章でもあり、根拠のはっきりしないような内容をあんまりテレビで言わないでほしいな…と思ってもやもやした次第です。